かわさき市民オンブズマン会報 第43号 z
2004年10月3日掲載

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***もくじ***

● 主張:専門家を疑えーBSE問題に関連して(事務局長:清水芳治)
● 第11回全国市民オンブズマン函館大会特集
● 十字路
  ★:阿部市長 外遊費用の返還を!(茂木 實)
  ★:ニーズを探求しない行政施策 (望月文雄)
  ★:川崎駅西口 再開発に取り組んで(恩田顕二)
● 会計報告

主張 : 専門家を疑え―BSE問題に関連して(事務局長 清水芳治)



 どうしてこんな結論に到るのか、どうしても理解できない。ご存知の、新聞紙面を賑わしている

例のBSE(牛海綿状脳症)での食品安全委員会プリオン専門調査会(座長、吉川泰弘東大教授)の

中間報告とアメリカからの牛肉輸入論議である。

 20ヶ月齢以下では異常プリオンがこれまで検出できなかったから今後検査を除外するというのだ。

では20ヶ月齢と1日は検出可能になるのか、20ヶ月齢と半月はどうなる。検出できた最低月齢がこ

れまでは30ヶ月齢と仮定しよう。この30ヶ月齢牛はいつから蓄積し始めたかは不明だが、ともかく

検査で発見された30ヶ月までに脳や脊髄に異常プリオンをためてきたのである。牛は生きている限

り月日を連続する。ある月齢を境に突然蓄積が開始されるなどとは考えられない。検査方法の精度

の改善もあるだろう。これまでの経験を絶対視したかのような、月齢による線引きに合理的根拠を

求めること自体無理なのではないか。ましてやその結論でアメリカ牛の輸入解禁の糸口になると云

うのはどういう筋道か。



 アメリカでは多数頭の牛が放牧されているため、牛の固体履歴管理(トレーサビリティー)がき

わめて困難であるといわれている。だとすれば、この固体履歴管理を確かなものにさせ、日本の基

準を透過させるためには相当の年月を要することになるはずである。輸入が年末とか新年早々など

と云う話ではあるまい。20ヶ月齢問題を輸入解禁に結びつけるのは、ここでも論理のすり替えでは

ないだろうか。まさか大統領ブッシュが肉屋になって牛肉の輸入を懇願するからではあるまい。



 政府、各省庁、市町村、全国至るところでプリオン専門調査会のように、やれ委員会、やれ審議

会、はたまた専門委員会、さては懇談会と称して、行政組織の外部からいわく学識経験者、いわく

知識人を駆り集めさまざまな問題を検討させている。有効な議論も多いだろうが、あれこれの会議

をかけ持ったり、新味の知恵がなくなっても惰性で継続し、随分高額なお手当てを頂戴している専

門家もいるようだ。その結果、政府税制調査会のように、これまで消費税を何に使うといってきた

か、実際にどうだったかの検証もなく、前回の消費税値上げの折、減税したのは何税か、そもそも

1000兆円といわれる国や地方自治体の借金がなぜ生まれたかの問題点の指摘もせず、低所得層が生

活してゆくうえで一方的に大きな負担となる消費税値上げを当面の最終目標とする組織も平然と現

れてくる。

 こうしたことは環境、エネルギーなどさまざまな面でも同じように起こっている。そして中には

専門家もどきもいる。川崎市に引き戻して考えれば、たとえば監査委員は今まで市民の問題提起に

いかほどの貢献をしてきたか、点検が必要であろう。 

 私たちは税金の無駄遣いを監視することを大きな任務としている。そのためには専門家といわれ

る人々に審議を任せっぱなしにするのではなく、専門家がどこでどんな議論をしているかにもっと

神経を使わねばなるまい。



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十字路
★ 安部市長 外遊費用の返還を!(茂木 實)



 ミューザ川崎シンフォニーホールが7月1日オープンした。投資額は建設費など200億円、今年度

の運営予算は10.7億円。ホールの収益力は弱体で構造的赤字体質が続くのに、早速にタカったのが

他ならぬ阿部市長であった。

 音楽を通じて街の活性化を!の掛け声の下、市長は6人を率いて約600万円を使い8月19日〜24日

の間、世界最大の芸術イベントと言われ、音楽ファン垂涎の的のザルツブルグ音楽祭をタダで堪能

に出かけた。発端は表敬訪問を口実にした押しかけであった。相手は最繁忙期でさぞかし迷惑がっ

たであろう。帰国後カムフラージュに、来夏のクラシック音楽祭の計画を発表したが、当地にいて

も立案できる内容のもの。

 上海への市売り込みのトップセールスとは正反対の訪問の魂胆は見え見え。6人までが音楽にズ

ブの素人であったのが何よりの証拠。

 国際親善が目的なら職員、市民、音楽ファンに声をかけて夏休みツァーを組んで訪問するところ

(勿論自費)。そして先日、川崎駅前で親善コンサートを開いた彼の地の鉄道音楽隊の返礼として、

同様に青空コンサートを披露した方が、市民交流が図れたばかりか、友好都市が職員のお遊び目的

ではなく、市民参加・交流も兼ねていることを立証したはず。

 この人、市財政悪化を声高に叫んで、ゴミ収集有料化で零細商店主を、バス敬老パスの一律有料

化という愚挙で老人をイジめる一方で、ラ指数104.4と政令市中24年連続トップの、財政悪化の共

犯者というべき高い職員給与は削減せず。もしも外遊費用を返還しなければ、「弱きをくじき強き

を助ける」評価の上に、「先楽後憂」の汚名を着ることになろう。

 そして又、健康保険料の職員負担率31.5%が象徴する、職員を覆う市民へのタカリ根性に、フレッ

シュなはずの市長までが既に汚染されてしまった現実に、市民は冷水を浴びる思いで、市再生の希

望を失うだろう。






★ ニーズを探求しない行政施策 (望月 文雄)

 

今年の8月25日に阿部川崎市長名で「かわさき市民オンブズマン」宛てKCT関連の2度目の回答が

なされた。二つの回答書に対する私見を述べたい。



5月31日回答に対して。

1,質問1についてという回答の中で「商港機能を併せ持つ総合港湾として」という語句に問題あ

 り。「商港」の「商」の基盤が明確化されていない。また「コンテナ輸送が国際海上輸送の主役

 となり、」という認識は一般化された社会通念であり、川崎港での必要性(市場原理に基づく市

 場調査)が示されていない。

2,質問2についての回答で「本市が直接にコンテナ荷役作業などの経営に関与するものではござ

 いません」という文章の、「経営に関与」という文言への疑問。第三セクターKCTの破産に伴

 って、行われた7社による作業の継続を市が行っているということと矛盾しないか。埠頭とガント

 リークレーンの所有ということは、「経営」外の概念で説明ができるのか。8基の門型クレーン

 を川崎市が買い取る議案が9月議会に提案されている。



8月25日回答に対して。

3,港湾法29条の解釈についての回答は5月31日回答質問9の解釈の展開で内容は同一。問題は「港

 務局」という局が川崎市にはないから適用はないというもの。横浜市では「準拠」しているとい

 う考え方で、毎年国土交通省に報告している。県外の港湾局でも横浜市と同様な対応をしている

 と推測される。

4,質問5「スーパー中枢港湾について」の回答で、川崎港が認定されなかったことを明文化せず、

 東京港、横浜港に川崎港を含めて京浜3港という纏めで、問題点をボカシている。

5,質問6に対する回答「KCTの破産は、『バブル』経済崩壊後の長期にわたる景気低迷」とい

 う文章について。KCTの設立は平成6年でバブル崩壊後すでに5・6年を経過しており、「バブ

 ル崩壊後の景気低迷」を原因とする見解自体が非常識であろう。

  根本的問題は川崎に商業港を設立しなければならないという市場のニーズがあったかを確認せ

 ず、国策に便乗してKCTの設立を図ったことであろう。設立に参与した諸企業が第三セクター

 を決議した腹づもりには、最終責任は行政が取らざるを得ないという見込みを温存したというべ

 きだろう。



 最後に「市場原理」について、平成15年度「川崎市予算案について」という冊子の「平成15年度

 予算案編成方針について(依命通達)」という東山助役の文章には、

 「<1,行政体制の再整備>という項目の書き出しで「市場原理の活用を大原則とし、」、

 @市場原理が的確に、A市場原理が的確にと「市場原理」を3回も繰り返しているが、平成16年度

 「川崎市予算案について」の冊子には「市場原理」という単語は1度も使われていない。市三役は

 その言葉の使用に躊躇したのだろうか。




★ 川崎駅西口 再開発に取り組んで(恩田 顕二)



 川崎駅西口再開発計画に伴い西口付近は大きく変貌をつづけています。

 音楽の街川崎という、川崎市のイメージチェンジを目指しての街づくりが展開中です。

 中心は2000人収容のクラシックホール、27階建て業務用ビルにはお店も入り、それぞれオープン

して市民の関心を高める計画や催しが行われています。周辺には高層マンションが林立、その一角

には認可保育園も設置されました。

 私たち、川崎駅西口文化ホール・川崎駅西口再開発を考える会(以下、考える会)もこの計画に

積極的に関わりこの開発が地元、住民の商売や生活にプラスになることを第一に、川崎市関係当局

に意見を述べて提案、交渉を行ってきました。

 ホールについては、市民が気楽に利用できる300席程度の多目的ホール、また西口方面への通路の

確保に螺旋階段の他にエスカレーターの設置を強く要望、道路には植栽、街路樹、交差点のスクラ

ンブル化等、意見を述べ実施を求めました。

 文化ホール(ミューザ)については、計画決定で変更できず別の方向となりましたが、エスカレ

ーターは西口デッキ通路と接続して設置されました。現在多くの人が利用出来、大変喜ばれていま

す。また川崎駅西口堀川町地区開発事業(東芝跡地)にも積極的に関わり、計画地を含む川崎駅西

口周辺は、川崎市の上位計画において、各種の中枢業務機能と、広域的な商業・生活・文化の諸機

能の集積を図り、新しい川崎都心のシンボルと期待されております。

 計画地は、川崎駅西口の正面に位置しており、西口地区に残された最も枢要で大規模な地区であ

ることから、計画的な市街地整備による土地の高度利用が望まれてきました。

 区域面積は89,196u。東側住宅ゾーン16,119uに地上34階建て、地価1階、高さ124m、総戸数638

戸、計画人口1,950人、駐車台数約320台、駐輪台数約960台、西側商業ゾーン71,999uに地上6階建

て、地価1階、高さ37m、建築面積45,458u、、駐車台数約1,900台、駐輪台数施設用約2,200台、公

共用約1,000台を予定。住宅ゾーンは本年10月から着工予定、商業ゾーンは来年4月から着工予定に

なりました。

 これらに対し、私たちは日照障害・電波障害・風害・景観・緑・大気汚染・振動・廃棄物等々、

事業開発者と幾度も交渉を重ね、より良き街づくりにするため考える会の金澤会長はじめ多くの役

員・会員は、要望を実現していくため大変な労力と、説得することが求められ、そして多くの地元

の皆さんの応援をいただき、要望をかなえることが出来ました。

 住みよい街づくりに向けて、これら数多くの経験を生かし、かわさき市民オンブズマン代表幹事

篠原義仁氏が最近発刊された『闘ってこそ自由! 勝利して本当の自由』の題名のようになるよう、

頑張って行きたいと思います。